2016年6月30日木曜日

「脂質 = 不健康」 ではない!魚などの油で心臓病予防❔

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JAMA Internal Medicine誌、2016年6月27日オンライン号より。

「脂質 = 不健康」 というイメージがあるかもしれませんが、実は脂質にも様々な種類があります。
魚に含まれるDHAやEPA、亜麻仁油やエゴマ油に含まれるα-リノレン酸などは「オメガ3多価不飽和脂肪酸」と呼ばれる種類で、コレステロール低下・心臓病予防など、様々な健康効果があると言われています。

これまでの研究では、アンケートを元にオメガ3多価不飽和脂肪酸の摂取量を推測したものが多かったのですが、今回は体内にどの位オメガ3多価不飽和脂肪酸があるかが計測されています。
つまり今回の研究では、よりオメガ3多価不飽和脂肪酸の効果が適切に評価されているのです。
その結果、体内のオメガ3多価不飽和脂肪酸濃度が高いと心臓病の発症リスクが低かったと報告されました。

ダイエット中などは脂質を敬遠しがちですが、量だけでなく質も重要です。
旬の魚を楽しみ、健康に良いオメガ3多価不飽和脂肪酸をしっかり摂りましょう♪


【試験概要】
  • 研究デザイン:前向き・後ろ向き研究19件の統合解析
  • 対象者:16ヵ国より45,637名。ベースライン時の年齢は中央値で59歳。
【試験結果】
オメガ-3多価不飽和脂肪酸は血液・リン脂質・コレステロールエステル・脂肪組織などにおける濃度で評価された。
  • DHA:DHAが高いと致死性冠動脈疾患の発症リスクが10%低かった(RR 0.90)
  • α-リノレン酸:α-リノレン酸が高いと致死性冠動脈疾患の発症リスクが9%低かった(RR 0.91)
  • DPA:
    • DPAが高いと致死性冠動脈疾患の発症リスクが10%低かった(RR 0.90)
    • DPAが高いと冠動脈疾患の発症リスクが6%低かった(RR 0.94)

【論文リンク】
ω-3 Polyunsaturated Fatty Acid Biomarkers and Coronary Heart Disease: Pooling Project of 19 Cohort Studies

2016年6月29日水曜日

食生活で健康寿命が変わる❔身体機能障害を起こすリスクが13%低下

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Journal of Nutrition誌、2016年7月号より。
日本は長寿国として知られていますが、最近では平均寿命だけでなく「健康寿命」というコンセプトが注目されています。


「健康寿命」というのは日常生活に制限なく過ごせる期間のことで、平均寿命との差は寝たきり・要介護の期間を意味します。
現状では男女とも平均寿命と健康寿命の間に10歳程度の差がありますが、これを短縮することは大きな課題です。

今回の研究では、そんな健康寿命が食生活で変わる❔という報告がされました。
食生活スコアと身体機能障害の関係を評価したところ、スコアの高いヒトでは身体機能障害を起こすリスクが13%低かったのです。

健康的な食生活で身体機能障害を予防し、元気に長生きを目指しましょう♪


【試験概要】
  • 研究デザイン:コホート研究
  • 対象者:Nurses’ Health Studyより54,762名の女性。
  • 研究期間:1992年から2008年
【試験結果】

  • 食生活の質(Alternative Healthy Eating Index-2010:AHEI-2010というスコアで評価)の総スコアが最も高いグループは、最も低いグループと比較して身体機能障害をおこすリスクが13%低かった(HR 0.87)。
  • 食品群ごとに評価すると、下記項目は身体機能障害のリスク低下と有意に相関していた。
    • 野菜・果物の高摂取
    • 砂糖入り飲料・トランス脂肪酸・塩分の低摂取
    • 適度な飲酒
  • 食品ごとに評価すると、オレンジ・オレンジジュース・リンゴ・梨・レタス・ロメインレタス・クルミの摂取が最も身体機能障害のリスク低下と相関していた。
  • 食品群、食品ごとの相関は、総スコアと比較して概ね小さく、各項目よりも全体の食事パターンが重要だと考えられる。
【論文リンク】
Greater Adherence to the Alternative Healthy Eating Index Is Associated with Lower Incidence of Physical Function Impairment in the Nurses’ Health Study

2016年6月28日火曜日

健康的な食生活 + 運動 = がん発症リスクが10~61%低下❔

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Cancer Epidemiol Biomarkers Prev誌、 2016年6月23日オンライン号より。


日本人の死因第1位のがん
大切なヒトを亡くした経験のあるヒトや、遺伝子的に自分もリスクが高いと不安に思っているヒトが多いのではないでしょうか。
がんの発症にはもちろん遺伝子も関係しますが、生活習慣の影響も大きいと言われています。

今回の研究はシステマティックレビューというエビデンスレベルの高い研究で、既存研究12件のデータが合わせて解析されました。
その結果、がん予防ガイドラインで推奨されているような食生活・身体活動を行っていたヒトではがんの発症リスクが10~61%も低かったのです。

うちはがん家系だから…と悲観的になるのではなく、遺伝子的にリスクが高いのであれば尚更健康的な生活習慣を心掛け、がん予防に役立てましょう♪


【研究概要】
  • 研究デザイン:システマティックレビュー
  • 対象:がん予防ガイドライン(食/身体活動)の遵守と、がん発症率/死亡率の相関を評価した研究12件
【研究結果】
がん予防ガイドラインを遵守しているヒトではがん発症/死亡リスクが10~61%低かった。
部位別にみると、…
  • 乳がん:がん予防ガイドライン遵守で、発症リスクが19~60%低かった
  • 子宮体がん:がん予防ガイドライン遵守で、発症リスクが23~60%低かった
  • 大腸がん:がん予防ガイドライン遵守で、発症リスクが27~52%低かった
  • 肺がん:不明確な相関
  • 卵巣がん:相関なし
  • 前立腺がん:相関なし

2016年6月27日月曜日

食物繊維の効果は便秘改善だけじゃない!高摂取だと健康的に年を重ねられる❔

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J Gerontol A Biol Sci Med Sci誌、 2016年6月1日オンライン号より。


「食物繊維」と聞くと便秘に良い!というイメージを持っているヒトは多いと思いますが、実は食物繊維の効果はずっと広範囲にわたるかもしれません。

今回の研究では、食物繊維が「健康的に年を重ねる」ことに役立つかということが評価されました。
「健康的に年を重ねる」 ということの定義は様々あると思いますが、この研究では「 障害、うつ、認知能低下、呼吸器症状、がんや冠動脈疾患などの慢性疾患を有さない加齢」として定義されています。

そして10年間の研究の結果・・・
食物繊維摂取量が最も多いグループでは健康的に年を重ねた割合が79%高かったと報告されたのです。

野菜や果物、全粒穀物など食物繊維を多く含む食品を積極的に摂り、健康長寿を目指しましょう♪

【研究概要】
  • 研究デザイン:コホート研究。
  • 対象者:49歳以上でがん・冠動脈疾患・脳卒中の既往のない者1,609名。
  • 研究期間:10年間の追跡。
【研究結果】
  • 食物繊維の摂取量が多いヒトでは、健康的に年を重ねるヒトが多かった。
    • 食物繊維の総摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループと比較して健康的に年を重ねた割合が79%高かった(OR 1.79)。
    • パンなど穀類からの食物繊維摂取量が常に中央値未満だったヒトでは、その他のヒトと比較して健康的に年を重ねた割合が半分程度だった(OR 0.53)。
    • 果物からの食物繊維摂取量が常に中央値未満だったヒトでは、その他のヒトと比較して健康的に年を重ねた割合が1/3程少なかった(OR 0.64)。 

  • 炭水化物摂取量、GI値(※1)、GL値(※2)などは健康的に年を重ねることと有意な相関を示さなかった。
(※1) GI値:Glycemic Indexの略でグリセミック指数などとも呼ばれる。一定量の炭水化物を含む食品を摂取させた際、それが体内に吸収され血糖値を上昇させる度合いを相対的に表したもの。

(※2) GL値:Glycemic Loadの略でグリセミック負荷などとも呼ばれる。各食品の通常1回に食べる量に含まれる炭水化物量とGI値とを合わせて考慮した指数。
 GL = 各食品1食分に含有する炭水化物の量(g) × GI ÷ 100
で算出される。

2016年6月24日金曜日

規則的な食事パターンでメタボの予防・改善❔

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Proceedings of the Nutrition Society誌、2016年6月22日オンライン号より

健康的な食生活を送るためには、何をどの位食べるかだけでなく、どのタイミングで何回食べるかといった食事パターンも重要だと言われています。

食事パターンが実際どの程度健康に影響するかについては、まだ小規模な研究が数件発表されているだけですが、既存のデータでは規則的な食事パターンがメタボリックシンドロームの予防/改善に役立つかも❔と報告されています。

忙しい1週間を終えると、週末はついお昼過ぎまで寝ていたくなりますが、頑張って早起きして毎日同じ位の時間に、規則正しく食事をするようにしましょう♪

【研究概要】
  • 研究デザイン:食事パターンと心血管・代謝能の関係を評価した研究のレビュー
【研究結果】
  • 数件の断面研究とコホート研究:不規則な食事時間がメタボリックシンドロームや心血管障害のリスク(BMI(※1)や血圧など)上昇と相関すると多くの試験が示した
  • 2件の無作為化試験:規則的 vs. 不規則な食事時間のグループに分けて2週間介入したところ、規則的な食事時間のグループでインスリン値・LDL-コレステロール値・総コレステロール値などの改善がみられた。
(※1)
BMI: Body Mass Index(ボディーマスインデックス)の略。身長と体重をもとに算出した指数で体格をあらわす。体重[kg]を身長[m]の二乗で割って算出する。

【論文リンク】

2016年6月23日木曜日

地中海食で心血管障害のリスク低減❔

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European Heart Journal誌、2016年4月24日オンライン号より。

病気の予防や管理のための食生活というと、あれを食べてはいけない、これもダメ…と制限が多いようなイメージがあります。
確かに不健康な成分を含む食品はなるべく控えたいところですが、それよりも重要なのは健康に良い成分を含む食品を積極的に食べることかもしれません。
今回の研究では、健康的な食生活(地中海食)のスコアが高いと心血管障害の発症リスクが低く、不健康な食生活(西洋食)のスコアは特にリスクと関係なしと報告されました。

全粒穀物・果物・野菜・豆類・魚などを積極的に摂り、ポジティブな気持ちで健康的な食生活を目指しましょう♪

【試験概要】
  •  研究デザイン:コホート研究
  • 対象者:STABILITY研究より、安定した冠動脈疾患の男女15,482名。平均年齢67歳。
  • 期間:中央値で3.7年の追跡
食事に関するアンケートを元に下記2つの指標が算出された
  1. 地中海食スコア:
    • 全粒穀物・果物・野菜・豆類・魚・アルコールの高摂取
    • 肉類の低摂取
  2. 西洋食スコア:
    • 精製された穀類・嗜好品・清涼飲料水・揚げ物の高摂取

【試験結果】
主要な心血管障害を心血管死亡・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中のいずれかとして定義し、各スコアとその発症リスクの相関を評価したところ・・・
  • 地中海食スコアが高いと主要な心血管障害の発症リスクが低かった。
    • 15点以上:対象者の7.3%で発症
    • 13-14点:対象者の10.5%で発症
    • 12点以下:対象者の10.8%で発症
  • 西洋食スコアは主要な心血管障害発症リスクと有意な相関なし。
【論文リンク】
Dietary patterns and the risk of major adverse cardiovascular events in a global study of high-risk patients with stable coronary heart disease

2016年6月22日水曜日

62件の研究を纏めて解析!大豆などのフィトエストロゲンで更年期障害改善❔

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JAMA誌、2016年6月21日号より。
更年期障害にはホットフラッシュ、ほてり、多汗、だるさなど様々な症状があり、欧米では40-50%のヒトが症状改善のために代替療法を使用していると言われます。

そんな代替療法の一つとして、日本でも人気があるのが大豆イソフラボンなどエストロゲン様活性をもった植物(フィトエストロゲン)です。
今回の研究では、フィトエストロゲンを使った研究62件のデータより、その有効性が改めて評価されました。
その結果、フィトエストロゲンはホットフラッシュ・膣の乾燥軽減には有意な効果を示し、寝汗には特に効果なしと報告されたのです。

解析に使用された研究の多くは方法論などに問題があり、あまり質の高くないものでしたが、大豆製品は低脂質高タンパクでダイエットにも良いので、積極的に食べてみましょう♪


【試験概要】
  • 研究デザイン:メタ解析。2016年3月27日までに発表されており、植物製品によるホットフラッシュ・寝汗・膣の乾燥などへの有効性を評価した無作為化比較試験62件が対象。
  • 対象者:6,653名の女性。

【試験結果】
フィトエストロゲンにより・・・
  • ホットフラッシュの頻度:有意に低減した(pooled mean difference of change: -1.31)
  • 膣の乾燥スコア:有意に改善した(pooled mean difference of change: -0.31)
  • 寝汗の頻度:有意な効果なし
個々のフィトエストロゲンを分けて解析すると、例えば食事/サプリメントからの大豆イソフラボンでは・・・
  • ホットフラッシュの頻度:有意に低減した(pooled mean difference of change: -0.79)
  • 膣の乾燥スコア:有意に改善した(pooled mean difference of change: -0.26)
  • 寝汗の頻度:有意な効果なし
メタ解析の対象となった試験は質にばらつきがあり、その74%は3項目以上でバイアスリスクが高いと評価された。


【論文リンク】
Use of Plant-Based Therapies and Menopausal Symptoms: A Systematic Review and Meta-analysis

2016年6月21日火曜日

睡眠不足に対してカフェインが有効なのは2日間まで❔

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Sleep、 2016年6月オンラインサプリメント号より。

忙しくて睡眠不足だからコーヒーをガブ飲みして目を覚ます…誰もが経験のあることだと思います。
しかし今回の研究では、睡眠不足に対してカフェインが有効なのは2日間まで❔と報告されました。

睡眠を5時間に制限してカフェイン、もしくはプラセボを与えて比較したところ、最初の2日間はカフェインにより覚醒度が高まったものの、最後の3日間では効果が認められなかったのです。

どうしても睡眠がとれない時はカフェインに頼るのも一つの手ですが、その効果はいつまでも続くものではありません。
なるべく早くスケジュールを調整し、睡眠をしっかり確保するようにしましょう♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:二重盲検プラセボ対照試験
  • 対象者:48名の健常者
  • 介入:ベッドでの時間を5時間に制限し下記のいずれか
    • カフェイン200mg x 1日2回
    • プラセボ x 1日2回
  • 研究期間:5日間
【試験結果】

  • 最初の2日間:カフェインはプラセボと比較して、覚醒度(Psychomotor Vigilance Task/PVTにて評価)を上昇させた
  • 最後の3日間:カフェインはプラセボと比較して、覚醒度に有意な影響を与えなかった

2016年6月20日月曜日

運動、しかも4時間後の運動が記憶定着に有効❔

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Current Biology誌、2016年6月16日号より。
記憶を定着させるためには反復練習や睡眠が良いなど様々な説がありますが、今回の研究では運動、しかも特定のタイミングでの運動が有効❔と報告されました。

対象者に一定量の記憶をさせ、

  1. その直後に運動
  2. 4時間後に運動
  3. 運動なし
の3グループに分けて記憶定着率を比較したところ、4時間後に運動を行ったグループで最も記憶定着率が高かったのです。

勉強し続けるのではなく、勉強後4時間程経ったら少し運動をしてみると、気持ちの切り替えやストレス発散だけでなく、記憶定着にも役立つかもしれません♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:無作為化比較試験
  • 対象者:72名。
  • 介入:関連づけられた絵と場所のセット90組を40分間で記憶した後、下記の3群に無作為化
    1. 記憶直後に35分間の運動
    2. 記憶4時間後に35分間の運動
    3. 運動なし
【試験結果】
2日後に記憶がどの程度残っているか評価し、記憶させた直後の点数割合で示したところ、記憶4時間後に運動をしたグループで記憶定着率が最も高かった。
  1. 記憶直後に35分間の運動:79.5%
  2. 記憶4時間後に35分間の運動:86.6%
  3. 運動なし:80.0%
【論文リンク】
Physical Exercise Performed Four Hours after Learning Improves Memory Retention and Increases Hippocampal Pattern Similarity during Retrieval

2016年6月17日金曜日

植物中心の食生活で糖尿病発症リスクが20-35%低い❔

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PLOS Medicine誌、2016年6月14日号より。
植物性食品、例えば野菜・果物・全粒穀物などにはビタミンやミネラル、食物繊維など様々な栄養素が豊富に含まれています。
今回の研究では、植物性食品中心の生活で糖尿病が予防できる❔と報告されました。

植物性食品と一口に言っても、野菜・果物・全粒穀物のように健康に良い食品もあれば、砂糖たっぷりのジュース類、精製された穀物などあまり健康に良くない食品もあります。
今回の研究ではこれらを分けて考えた場合の解析も行われており、糖尿病予防効果があったのはもちろん前者でした。

旬の野菜や果物をたっぷり食べて、糖尿病を予防しましょう♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:コホート研究3件の解析
  • 対象者:Nurses’ Health Studyより69,949名の女性、Nurses’ Health Study 2より90,239名の女性、Health Professionals Follow-Up Studyより40,539名の男性。ベースライン時に慢性疾患を患っていない者。
  • 期間:4,102,369人年の追跡
2-4年毎に食生活に関するデータを集め、それを元に下記3つの指標が算出された

  1. PDI(植物中心の食生活スコア):
    • 摂取量が多いほど高スコア: 植物性食品
    • 摂取量が多いほど低スコア: 動物性食品
  2. hPDI(植物中心の健康的な食生活スコア):
    • 摂取量が多いほど高スコア: 全粒穀物、野菜・果物・ナッツ類・豆類・植物性オイル・お茶やコーヒーなどの健康的な植物製品
    • 摂取量が多いほど低スコア: 果物ジュース・甘味飲料・精製された穀類・イモ類・菓子/デザート類などの不健康な植物製品、動物性食品
  3. uPDI(植物中心の不健康な食生活スコア):
    • 摂取量が多いほど高スコア: 果物ジュース・甘味飲料・精製された穀類・イモ類・菓子/デザート類などの不健康な植物製品、動物性食品
    • 摂取量が多いほど低スコア: 全粒穀物、野菜・果物・ナッツ類・豆類・植物性オイル・お茶やコーヒーなどの健康的な植物製品

【試験結果】
複数の交絡因子とBMI(※1)について調整を行った解析では・・・
  • PDIスコアが最も高いグループは、最も低いグループと比較して糖尿病の発症リスクが20%低かった(HR 0.80)
  • hPDIスコアが最も高いグループは、最も低いグループと比較して糖尿病の発症リスクが34%低かった(HR 0.66)
  • uPDIスコア最も高いグループは、最も低いグループと比較して糖尿病の発症リスクが16%高かった(HR 1.16)
(※1)
BMI: Body Mass Index(ボディーマスインデックス)の略。身長と体重をもとに算出した指数で体格をあらわす。体重[kg]を身長[m]の二乗で割って算出する。


【論文リンク】
Plant-Based Dietary Patterns and Incidence of Type 2 Diabetes in US Men and Women: Results from Three Prospective Cohort Studies

2016年6月16日木曜日

新しい肥満治療認可!胃から食べたものを排泄しカロリー30%カット❔

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Food and Drug Administration(FDA: 米国食品医薬品局)のプレスリリース、2016年6月14日より

6月14日、FDAはAspireAssistという新しい肥満治療を認可しました。
これは内視鏡を使ってチューブを胃に設置し、そのチューブを通して胃内の食べ物を排泄するものです(詳細ビデオ)。
食後20-30分経ったら患者さん自身がこのチューブを通して食べたものを排泄し、摂取したカロリーの約30%程度が除去されるそうです。

AspireAssistの対象となるのはBMI(※1)が35~55の肥満者で、手術以外の肥満治療では減量/減量後維持ができなかったヒトとされています。摂食障害の患者さんは対象外です。

好きなものを食べてカロリーを30%排泄できるなんて夢みたい!と安易に喜んではいけません。
内視鏡とはいえチューブを設置するにはリスクが伴いますし、チューブを入れっぱなしにしていることで炎症や感染のリスクもあります。
AspireAssistに伴う副作用としては消化不良・吐き気・嘔吐・便秘・下痢などが報告されています。

昨日ご紹介したように人口の35~40%が肥満という米国。
有効な肥満治療はウェルカムしたいところですが、食べたものを胃から一部排泄するという人工的な方法をとらなければならなくなる前に、健康的な生活習慣で肥満の予防・改善を心掛けたいですね♪


AspireAssistの有効性を示す臨床研究は下記の通りです。

【試験概要】
  • 研究デザイン:介入研究
  • 対象者:肥満者171名
  • 介入:AspireAssist+生活習慣改善、もしくは生活習慣改善のみ
  • 研究期間:1年間
【試験結果】
  • AspireAssist+生活習慣改善 ⇒ 平均して体重の12.1%の減量
  • 生活習慣改善のみ ⇒ 平均して体重の3.6%の減量
(※1)
BMI: Body Mass Index(ボディーマスインデックス)の略。身長と体重をもとに算出した指数で体格をあらわす。体重[kg]を身長[m]の二乗で割って算出する。

【論文リンク】

米国では男性の35%、女性の40%が肥満!特に女性は肥満割合増加中!

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JAMA、2016年6月7日号より


世界各国で肥満者の割合は増加傾向にあり、米国もその例外ではありません。
最新(2013-2014年)のデータを使用した解析では、何と女性の40%、男性の35%が肥満だと報告されました。
米国では肥満の指標としてBMI30以上というものが使用されますが、BMIの値というのは感覚としてつかみにくいかもしれません。

そこで厚生労働省の発表している日本人の平均身長(30代の2014年データを使用)に当てはめて考えると…

  • 男性の平均身長171.5cm ⇒ 体重88kg以上
  • 女性の平均身長158.3cm ⇒ 体重75kg以上

ということです。

また肥満にも段階があり、肥満3度という最も上のカテゴリー(BMI40以上として定義)に該当するヒトも男性で5%、女性で10%もいました。
これも厚生労働省の発表している日本人の平均身長(30代の2014年データを使用)に当てはめて考えると…

  • 男性の平均身長171.5cm ⇒ 体重118kg以上
  • 女性の平均身長158.3cm ⇒ 体重100kg以上
ということです。

糖尿病や高血圧など様々な疾患とかかわりのある肥満が、これほどまでに広がっているというのは非常に危険なことです。
生活習慣改善・薬剤・手術など、様々な方法が試みられていますが、肥満に対する効果的な対処はまだ見つけられていません。

日本では米国と比較すると肥満者の割合は少ないですが、油断は禁物です。
毎日の生活習慣に注意をはらい、肥満の予防・改善を心掛けましょう♪

【試験概要】

  • 研究デザイン:観察研究。米国国民健康栄養調査(NHANES)の解析。
  • 対象者:最新(2013-2014年)調査より男性2,638名(平均年齢46.8歳)、女性2,817名(平均年齢48.4歳)。また推移を評価するため2005-2012年調査より21,013名のデータも使用。

【試験結果】
2013-2014年データでは・・・

  • 男性の35.0%が肥満(※1)、うち5.5%が肥満3度(※2)
  • 女性の40.4%が肥満(※1)、うち9.9%が肥満3度(※2)
2005年以降の推移をみると、女性では肥満の割合・肥満3度の割合が共に上昇しているが、男性では有意な上昇は認められなかった。


※1) 肥満は日本ではBMI(身長と体重を使用した体形の指標)が25以上として定義されるが、WHOでは30以上として定義されている。本研究でも30以上として定義。

※2) 肥満3度はWHOよりBMI40以上として定義されており、本研究でも40以上として定義。

【論文リンク】

2016年6月15日水曜日

78万人以上のデータ解析!全粒穀物を多く食べると死亡率が15%程低い❔

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Circulation、 2016年6月13日オンライン号より。


プチプチした食感や栄養価の高さで人気となった玄米や雑穀米。
これらはホールグレイン/ 全粒穀物と呼ばれ、種皮や胚などの部分が精製されずに残っているため、食物繊維やビタミンB群など様々な栄養素が多く含まれています。
他にもオートミール、全粒粉のパンやパスタなどが全粒穀物です。

今回の研究では78万人以上という膨大なデータの解析より、全粒穀物を多く食べているヒトでは死亡率が15%程度低かったと報告されました。

全粒穀物を食べるようになると便秘が改善した、肌が綺麗になったなど様々な効果を実感するヒトがいますが、更に死亡リスクまで低減なんて嬉しいことばかりですね♪
最近では調理しやすい全粒穀物が販売され、様々なレシピが紹介されているので上手に取り入れてみましょう!

【試験概要】
  • 研究デザイン:メタ解析。コホート研究12件と米国国民健康栄養調査(NHANES)の未発表データを使用。
  • 対象者:786,076名。
【試験結果】
  • 全粒穀物の摂取が最も多いグループは、最も少ないグループと比べて…
    • 総死亡率が16%低かった(RR 0.84)
    • 心血管死亡率が18%低かった(RR 0.82)
    • がん死亡率が12%低かった(RR 0.88)
  • 全粒穀物の摂取が16g(約1単位)増えるごとに…
    • 総死亡率が7%減少した(RR 0.93)
    • 心血管死亡率が9%減少した(RR 0.91)
    • がん死亡率が5%減少した(RR 0.95)
【論文リンク】
Whole Grain Intake and Mortality From All Causes, Cardiovascular Disease, and Cancer: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies

Eating more whole grains linked with lower risk of death: American Heart Association Journal Report

2016年6月14日火曜日

血圧が今は低くても…急上昇に要注意❔

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Hypertension、 2016年5月9日オンライン号より。
年齢と共に血圧が少しずつ上がるのは自然なことですが、あまりに急上昇した場合は注意が必要かもしれません。

今回の研究では数十年にわたる血圧の変動と、脳卒中・死亡リスクの相関が調べられました。
その結果血圧高値のヒトだけでなく、至適血圧だったヒトが急上昇した場合も脳卒中・死亡リスクが高かったのです。
血圧が高いヒトも、今はそうでないヒトも、塩分控えめの食事・体重管理・禁煙など健康的な生活を心掛け、しっかり血圧管理をしましょう♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:観察研究(Rotterdam Study)
  • 対象者:55~106歳の男女6,745名 
【試験結果】
対象者は下記4グループに分けられた。

  1. 50年の間に収縮期血圧が120mmHg程度から徐々に160mmHg程度に上昇
  2. 収縮期血圧が中年期の120mmHg程度から200mmHg程度に急上昇
  3. 中年期の収縮期血圧は中程度に高く140mmHg程度
  4. 中年期の収縮期血圧が高値で160mmHg程度
グループ1と比較すると・・・

  • グループ2と4は脳卒中リスク・死亡リスクが高かった
  • グループ3の死亡リスクはグループ1とほぼ同程度だったが脳卒中リスクは最も高かった


【論文リンク】
Mid- to Late-Life Trajectories of Blood Pressure and the Risk of Stroke: The Rotterdam Study

2016年6月11日土曜日

中年期の心肺適応能が高いと脳卒中でのリスクが低い❔

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Stroke、 2016年6月9日オンライン号より。
メタボが気になるから運動しないと…と思いつつなかなか重い腰があがらず、若い頃から運動をしておくべきだったと後悔しているヒトもいるのではないでしょうか。
若い頃あまり運動をしていなくても「もう遅い」と諦める必要はありません!
今回の研究では、中年期の心肺適応能が高いと脳卒中のリスクが低い❓と報告されました。
「心肺適応能」というのは主に有酸素運動をすることで向上する能力で、今回の研究ではトレッドミルを使用して推測されました。

運動をすることでメタボ解消だけでなく、将来の脳卒中も予防できるかも…と聞くとモチベーションが上がりますね。
日々の運動を心がけで心肺適応能向上を目指しましょう♪

【試験概要】

  • 研究デザイン:Cooper Center Longitudinal StudyとMedicare(国の運営する医療保険で65才以上の高齢者と障害者が受給者)のデータを使用した解析
  • 対象者:19,815名 
  • 研究期間:129,436人年の追跡
【試験結果】
中年期の心肺適応能が高いと、脳卒中で入院するリスクが49%低かった(最高群 vs. 最低群でHR 0.61)。
脳卒中のリスク因子である高血圧、糖尿病、心房細動の有無について調整しても上記相関は有意であった。


【論文リンク】
Association Between Midlife Cardiorespiratory Fitness and Risk of Stroke The Cooper Center Longitudinal Study

2016年6月10日金曜日

睡眠不足だけでなくバラバラな就寝時間も要注意❔

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Hypertension、 2016年6月6日オンライン号より。

平日は忙しくて睡眠時間が短く、休日も夜遅くまで起きているかわりにお昼過ぎまで寝る…そんな生活をしている方はいませんか。
今回の研究では、睡眠不足はもちろん、就寝時間がバラバラであることも、自律神経の乱れや心血管障害リスク上昇に繋がることが報告されました。

24時間営業のお店などが増え、夜間シフトで働く方も多いと思いますが、十分な睡眠時間の確保と共になるべく同じような時間帯に就寝するよう心掛けましょう♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:介入試験
  • 対象者:20~39歳の健常男女26名
  • 介入:10時間睡眠 x3日間の後、睡眠制限(5時間)を課し下記のいずれか
    • 夜間睡眠グループ(00:30~5:30の睡眠)
    • 就寝時間バラバラグループ(8日間のうち4日間は就寝時間が8.5時間後ろ倒しで、9:00~14:00)
  • 研究期間:8日間
【試験結果】
  • 睡眠不足は日中の心拍数上昇と相関したが、血圧には影響がなかった
  • 就寝時間バラバラグループは、夜間睡眠グループと比較して…
    • 24時間蓄尿検査でノルエピネフリン(血管収縮、血圧上昇、気管拡張などと関連)が高かった
    • 夜間心拍数がより高かった
    • 夜間深い眠りの際の心拍変動が少なかった
【論文リンク】
Adverse Impact of Sleep Restriction and Circadian Misalignment on Autonomic Function in Healthy Young Adults

2016年6月8日水曜日

脂肪は悪者ではない❔地中海料理+オリーブオイルやナッツで体重管理❔

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The Lancet Diabetes & Endocrinology、 2016年6月6日オンライン号より。

薄着の季節になり「ダイエットしなきゃ!」と意気込んでいる人も多いのではないでしょうか。
ダイエット中のヒトはとにかく脂肪を控えようと思いがちですが、今回の研究ではオリーブオイルやナッツを豊富に含む地中海料理、しかもエネルギー制限なしで体重管理ができるかも❓と報告されました。

地中海料理というのはイタリア・スペイン・ギリシャなどの食生活で、野菜・果物・豆類・全粒穀類・魚介類などが豊富、肉類・乳製品は控えめ、油は主にオリーブオイルを使用する食生活です。
様々な疾患の予防に役立つ可能性が示され、最近注目を浴びている食生活なのです。

今回の研究では5年間という長期にわたってこの地中海食と一般的な低脂肪食が比較評価されました。その結果、地中海食は低脂肪食と同程度、もしくは低脂肪食よりも若干効果があるかもという結果が報告されたのです。

無理して脂肪の摂取を減らすのではなく、健康的な油脂も適量摂り、美味しく健康的にダイエットをしましょう♪


【試験概要】
  • 研究デザイン:無作為化比較試験(PREDIMED研究)
  • 対象者:スペインに住み2型糖尿病もしくは心血管リスク因子を3つ以上有するが症状の出ていない男女7,447名。男性は55~80歳、女性は60~80歳。
  • 介入:下記3種類の食事のいずれかで、カロリー制限はなし
    • 地中海食+エキストラバージンオリーブオイル
    • 地中海食+ナッツ
    • 低脂肪食:対照グループ
  • 研究期間:中央値で4.8年の追跡
【試験結果】
3グループいずれも体重は僅かに減少し、腹囲はわずかに上昇した。
3グループ間の差異は大きくないものの、オリーブオイルグループでは対照グループより減量効果がわずかに大きく、オリーブオイル・ナッツグループ共に対照グループより腹囲上昇の度合いが小さかった。

  • 5年間の体重変化は
    • オリーブオイルグループ:-0.43kg(有意差あり)
    • ナッツグループ:-0.08kg
  • 5年間の腹囲変化は
    • オリーブオイルグループ:-0.55cm(有意差あり)
    • ナッツグループ:-0.94cm(有意差あり)
【論文リンク】
Effect of a high-fat Mediterranean diet on bodyweight and waist circumference: a prespecified secondary outcomes analysis of the PREDIMED randomised controlled trial

2016年6月7日火曜日

妊娠中の人工甘味料で赤ちゃんの肥満リスク上昇❓

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JAMA Pediatrics、 2016年5月9日号より。

近年人工甘味料の消費量は増加しており、妊娠中もその例外ではありません。
その安全性については様々な意見がありますが、動物試験では子宮内での人工甘味料曝露が子孫の肥満リスク上昇に繋がると示唆されています。
今回の研究では動物試験の結果について、ヒトでも同じことがいえるのかが調査されました。
妊娠中の人工甘味料の摂取状況を調査し、生まれた子供が1歳の時のBMI(※1)から肥満リスクを評価したのです。
その結果、毎日人工甘味料を摂取していた妊婦の子供は肥満リスクが2倍以上だったと報告されました。

人工甘味料をむやみに悪者扱いする必要はありませんが、毎日のように摂っているヒトは妊娠中少し控えめにした方が良いかもしれませんね

【試験概要】
  • 研究デザイン:コホート研究(Canadian Healthy Infant Longitudinal Development: CHILD Study)
  • 対象者:上記コホート研究に含まれた健常な妊婦3,033名とその子供。妊婦は平均年齢32.4歳、平均BMI(※1)24.8。
【試験結果】
人工甘味料を毎日使用していた妊婦では、全く使わなかった妊婦と比較して乳児の肥満リスクが2倍以上だった。
  • 対象妊婦のうち、生まれた子供が1歳の時にBMIを計測できたのは2,686名。
  • 全妊婦の29.5%が妊娠中に人工甘味料を使用し、5.1%が毎日使用していた。
  • 人工甘味料を毎日使用していたグループは、全く使わなかったグループと比較して、乳児の肥満リスクが2.19倍だった(OR 2.19)
(※1)
BMI: Body Mass Index(ボディーマスインデックス)の略。身長と体重をもとに算出した指数で体格をあらわす。体重[kg]を身長[m]の二乗で割って算出する。
【論文リンク】
Association Between Artificially Sweetened Beverage Consumption During Pregnancy and Infant Body Mass Index

2016年6月6日月曜日

若いうちから健康的な食習慣を!思春期の脂肪摂取量が乳がんリスクに関与❓

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Cancer Epidemiol Biomarkers Prev、 2016年5月19日号より。

がんを始めとする様々な病気は中高年期になってから発症することが多いです。
しかし「予防」という観点で考えると、中高年になってから…ではなく、もっと若いうちから注意が必要かもしれません。
今回の研究では思春期の脂肪摂取量が乳がんリスクに関与❓と報告されました。

ある研究で思春期の食生活が評価されている女性について、約15年後の乳腺密度が調べられました。
この「乳腺密度」とはMRIを使って評価する指標で、乳腺密度が高いと乳がんリスクが高いことを意味します。
その結果、思春期の脂肪摂取量は乳腺密度、つまり乳がんリスクと相関すると報告されました。
予防的な影響がみられたのは多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で、魚やナッツ類、オリーブオイルなどに含まれます。
リスク上昇と相関したのは飽和脂肪酸で、バターや肉類の脂身に多く含まれます。

これらは乳がん以外にも心臓病や脳卒中などにも関与するので、飽和脂肪酸を控え、多価不飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸を多く含む食生活を心掛けましょう♪
お子様のいらっしゃる方は、小さいころから健康的な食習慣を身につけさせることで未来の病気予防に繋がるかもしれません♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:無作為化比較試験(Dietary Intervention Study in Children)の追跡
  • 対象者:上記無作為化比較試験の対象者より177名の女性
  • 研究期間:10-18歳で食事評価、25-29歳で乳がんリスク評価 
【試験結果】
※乳がんリスクは乳腺密度(%DBV)にて評価。乳腺密度が高いと乳がんリスクが高いとされている。
  • 思春期に飽和脂肪酸を多く摂取していると、乳がんリスクが高かった。
    • 高摂取グループ:%DBV 21.5%
    • 低摂取グループ:%DBV 16.4%
  • 思春期に一価不飽和脂肪酸を多く摂取していると、乳がんリスクが低かった。
    • 高摂取グループ:%DBV 15.8%
    • 低摂取グループ:%DBV 25.0%
  • 思春期に多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比率が高い食生活をしていると、乳がんリスクが低かった。
    • 高比率グループ:%DBV 14.3%
    • 低比率グループ:%DBV 19.1%
  • 発育段階で分けて解析すると、下記項目について初潮前は乳がんリスクと相関したが、初潮後の習慣は乳がんリスクと相関がなかった。
    • 多価不飽和脂肪酸
    • オメガ-3多価不飽和脂肪酸
    • 多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比率
【論文リンク】
Dietary Fat Intake During Adolescence and Breast Density Among Young Women

2016年6月3日金曜日

塩分摂りすぎだけでなく控えすぎも要注意!死亡率や心血管イベントのリスク上昇❓

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Lancet、 2016年5月20日オンライン号より。

塩分の摂りすぎは高血圧を招き、脳卒中などの病気に繋がると言われています。
日本人の食生活ではお味噌汁やお漬物など塩分の多い食品が多く、減塩醤油を使うなど注意しているヒトも多いのではないでしょうか。
塩分の摂りすぎが良くないのはその通りなのですが、今回の研究では逆に塩分の控えすぎでも死亡率や心血管イベントが上昇❓と報告されました。

高血圧の患者では、平均的な摂取量(塩分10-13g/日程度)と比較して、多くても少なくても死亡や心血管イベント発症リスクが20~30%上昇しました。
高血圧でないヒトでは、塩分摂取量が多くてもリスク上昇は特になく、少ない場合はリスクが26%上昇しました。

高血圧で塩分摂りすぎのヒトは是非今後も減塩を心掛けてほしいですが、高血圧でないヒトは
これからの季節、汗と共に塩分排泄量が増える時期なので控えすぎにも注意しましょう♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:前向き研究4件の統合解析
  • 対象者:49ヵ国から集められた133,118名。年齢は中央値で55歳。
  • 研究期間:中央値で4.2年間 
【試験結果】
※塩分摂取量は24時間蓄尿検査をもとに推算。エンドポイントは死亡もしくは主要心血管イベントの発症。
  • 塩分摂取量と血圧の相関は、高血圧患者においてより大きかった
    • 高血圧患者:ナトリウム摂取量が1g(塩分換算2.54g)増えるごとに収縮期血圧が2.08mg上昇
    • 高血圧でない者:同上、収縮期血圧が1.22mg上昇
  • 塩分摂取量が多いと、高血圧患者では死亡・心血管イベントのリスクが上昇したが、高血圧でない者では有意な影響はなかった。ナトリウム摂取量が4~5g/日(塩分換算10.2~12.7g程度)のグループと7g/日(塩分換算17.8g程度)以上のグループを比較すると…
    • 高血圧患者:死亡・心血管イベントのリスクが23%高かった(HR 1.23)
    • 高血圧でない者:有意差なし
  • 塩分摂取量が少ないと、高血圧患者・そうでない者のいずれにおいても死亡・心血管イベントのリスクが上昇した。ナトリウム摂取量が4~5g/日のグループと3g/日(塩分換算7.6g程度)未満のグループを比較すると…
    • 高血圧患者:死亡・心血管イベントのリスクが34%高かった(HR 1.34)
    • 高血圧でない者:同リスクが26%高かった(HR 1.26)
【論文リンク】
Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertension: a pooled analysis of data from four studies

2016年6月2日木曜日

運動をしないと子宮頸がんになりやすい❓

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J Low Genit Tract Dis、 2016年4月22日号より。
子宮頸がん予防についてはワクチンの効果と安全性が少し前に話題になりましたが、今回の研究では、運動しないと子宮頸がんになりやすい❓という報告がありました。

運動と一口にいっても、仕事の中でやらなければならない運動と、自由な時間に自主的に行う運動は効果が違うと考えられており、今回の研究は後者(「余暇身体活動」)についてです。

これからどんどん暑くなり、運動しようと思ってもなかなかクーラーの部屋から出る気がしない…ということもあるかもしれませんが、それで子宮頸がんのリスクが上がるかも…と聞くと頑張る気になれますね。
毎日の積み重ねが大切です。出来ることから始めてみましょう♪

【試験概要】

  • 研究デザイン:症例対照研究
  • 対象者:子宮頸がん患者128名と、年齢をマッチさせた対照(子宮頸がんが疑われたが最終的にはそう診断されなかった女性)512名 
【試験結果】
がんのない対照グループと比較して、子宮頸がんグループでは身体活動をしないヒトが2.4倍と多かった(OR 2.43)。
※上記は余暇身体活動に関する解析で、職業上の身体活動については子宮頸がんとの相関はなかった。


【論文リンク】
Impact of Physical Inactivity on Risk of Developing Cancer of the Uterine Cervix: A Case-Control Study

遺伝的にがん高リスクのヒトも諦めないで!生活習慣でリスク低下❓

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JAMA Oncology、2016年5月26日号より。

「がん家系」という言葉があるように、遺伝的にがんになりやすいヒトがいるのは事実です。
ただし遺伝的にリスクが高いからといって、諦める必要はありません!
今回の研究では、例え遺伝的にリスクの高いヒトであっても修正可能なリスク因子に気を付けることで、そのリスクが一般のヒトとほぼ同程度まで下がると報告されました。
その修正可能なリスク因子とは下記の4つ・・・

  1. BMI:体形を表す指標(※1)
  2. 更年期ホルモン療法
  3. 飲酒
  4. 喫煙

がんだけでなく多くの疾患で遺伝子と生活習慣の両方が関与します。
「遺伝だから仕方ない」ではなく、「遺伝だからこそ頑張ろう!」と生活習慣向上のモチベーションにしましょう♪

【試験概要】
  • 研究デザイン:観察研究
  • 対象者:Breast and Prostate Cancer Cohort Consortium (BPC3)よりがん患者17,171名と対照19,862名、および 米国国民健康調査2010年より5,879名。
【試験結果】


  • 30歳の白人女性が80歳までに浸潤性乳がんを発症するリスクは平均11.3%(リスク因子の有無により4.4~23.5%)
  • 遺伝的なリスク、修正可能なリスクのいずれも浸潤性乳がんの発症に影響した。例えば遺伝的に最も高リスクのグループのうち、低BMI・禁酒・禁煙・更年期ホルモン療法なしのヒトでは、一般集団における平均的女性とほぼ同程度までリスクが低下していた。
(※1)
BMI: Body Mass Index(ボディーマスインデックス)の略。身長と体重をもとに算出した指数で体格をあらわす。体重[kg]を身長[m]の二乗で割って算出する。



Breast Cancer Risk From Modifiable and Nonmodifiable Risk Factors Among White Women in the United States